データクリーンルームとは:プライバシー最優先のコラボレーションについて知っておくべきこと

近年の最も大きな破壊的要因は何かという質問に対して、広告主はプライバシーとAIという2つの候補の間でためらうでしょう。AIは今後、広告業界を超えて変革的な影響を与えると予想されていますが、ひとつ確かなことがあります。プライバシーを優先せずに、消費者データが関係するユースケースに対処できる組織はありません。
データクリーンルームの世界に飛び込む前に、少し時間をさかのぼって準備を整えましょう。
消費者プライバシーのための政府のアクション
インターネットの台頭により、組織はかつてないほど効率的に消費者データを収集できるようになりました。しかし、データ収集方法が考慮されることはほとんどありませんでした。
消費者のプライバシーに関する懸念の高まりに対処するために、政府が決断的なアクションを起こしたのは2016年になってからです。欧州は、初の包括的なプライバシー法である一般データ保護規則(GDPR)の導入によって主導的な役割を果たしました。
アメリカでは、カリフォルニア州が2018年にカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)を施行し、さらに2020年には、消費者保護の強化と企業へのより厳しいルールの強制を追加しました。
雪だるま効果は本物です。最近では、コロラド、コネチカット、フロリダ、モンタナ、オレゴン、ユタなどの多くの州が独自のプライバシー規制を導入し、他の州もこれに同調する構えを見せています。
この動きは世界中で止められません。国連貿易開発会議によると、データ保護法とプライバシー法は今や71%の国に存在しており、新しい法律の展開と進化も続いています。
プライバシー保護のイニシアチブに対するテクノロジー企業の反応
近年は政府規制に加え、大規模なテクノロジー企業はプライバシーを重視した独自のイニシアチブを展開しています。最も物議を醸し、広く議論されている取り組みの一つとして、サードパーティCookieに関連する進行中の変化があります。サードパーティCookieは、1990年代から広告業界の屋台骨となっていました。
何年にもわたる多くの発表と遅延の後、Googleは当面の間、サードパーティCookieをChromeで維持することを選択し、即時のCookie黙示録の訪れは回避されました。しかし、将来的には、ユーザーの同意などの制御を含め、アクセスと使用に対する制限が強化される見込みです。
eMarketerによると、Googleによる同意ベースのソリューションがリリースされ、MicrosoftによるEdgeブラウザのサードパーティCookieが廃止されれば、ウェブトラフィックの最大87%がすぐにサードパーティCookieから解放されるとのことです。一方、Apple SafariやMozilla Firefoxなどの主要ブラウザでは、すでにサードパーティCookieにアクセスできなくなっています。
これはCookieに限った話ではありません。GoogleとAppleの両社は、消費者のプライバシーに関するイニシアチブを引き続き展開しています。たとえば、2021年に導入されたAppleのApp Tracking Transparency(ATT)はアプリに対し、広告目的でデバイス識別子を収集する前に明確なユーザー同意を取得することを要求します。
最終的に、これらの変化は広告の「通貨」のエコシステム全体を変えようとしています。
データクリーンルーム:すべての始まり
最初の消費者プライバシー規制の導入と同時期に、別の大きな変化が広告業界を揺るがせていました。Googleが、広告主へのログレベルのデータの送信を停止することを発表したのです。
問題はつまり、広告主がキャンペーンのパフォーマンスを分析するためにはこうしたログが不可欠であるため、このデータにアクセスできなければ、組織は戦略や予算の効果的な最適化が不可能になり、何も見えない闇の中を進むことを余儀なくされることにあります。
この課題を解決するために、GoogleはAds Data Hubを導入しました。これは、広告主がキャンペーンの分析とレポーティングの実行を継続できるように設計されたソリューションです。このソリューションの魅力は何でしょうか。広告主はログレベルのデータを直接確認することも抽出することもできなくなりましたが、その代わりに、このプラットフォームがデータ分析のためのプライバシーの保護された環境を提供していることです。
後にデータクリーンルームテクノロジーとなるこの新しいアプローチは、当時は「次世代のインサイトとレポーティング」と呼ばれていました。
データクリーンルームとは
特定のテクノロジーカテゴリーの発生原因を説明することは困難ですが、その牽引力を示す兆候の一つとして、広く認知された独自の略語で言及されるようになることがあります。さあ、データクリーンルーム(DCR)の世界へ足を踏み入れましょう。
データクリーンルームの背後にあるコンセプトは、GoogleがAds Data Hubで対処したのと同じ課題、つまり基礎データを開示することなく2者間のデータコラボレーションを可能にすることから生まれています。
ファーストパーティデータは、組織が所有する最も価値のある資産の一つです。そのため、ファーストパーティデータのアクセスに関しては慎重さが求められます。しかし、さまざまな関係者が所有するデータセットの分析が不可欠となる重要なシナリオも存在します。
データクリーンルームは、複数の組織や単一の組織内のビジネスユニットがプライバシーを損なうことなく機密データや規制データを使用してコラボレーションを実行できる、制御されたセキュアな環境を実現します。
この構成された保護における重要な要素として、プライバシー強化テクノロジー(PET)の使用があります。これには、差分プライバシー、集約ポリシーおよび投影ポリシー、合成データ生成などの手法が含まれます。
データクリーンルームの利用者と一般的なユースケース
前述のように、データクリーンルームは当初、広告業界、特にパブリッシャーが粒度の高いデータに直接アクセスしなくても広告キャンペーンのパフォーマンスを測定できるという点で注目を集めました。
時が経つにつれ、コラボレーションの範囲は広がり、広告イニシアチブにおける、以下のさまざまな役割のステークホルダーが利用するようになりました。
ブランド:有料広告による新規顧客の獲得と収益拡大に注力しています。
パブリッシャーとメディアネットワーク:データと広告インベントリの収益化を目指しています。
代理店:キャンペーンの実行と戦略を通じて、広告主とパブリッシャーをサポートします。
テクノロジーベンダーとデータプロバイダー:データ、IDソリューション、広告エコシステム内での統合などのサービスを販売しています。

広告を中心とした効果測定企業として、私たちはブランドがすべてのプラットフォームにわたって効果測定を統一し、クリエイティブやオーディエンス、成果に至るまでのキャンペーンのライフサイクル全体について点と点を結ぶことができるようにするための支援への投資を強めています。クリーンルームは、私たちのブランドやパブリッシャーのクライアントにとって、プライバシーに準拠した方法でこれらのインサイトを実用化するための素晴らしいツールであることが証明されています」
Nick Aluia氏
このようなステークホルダー間のパートナーシップにより、以下のような一般的な広告コラボレーションユースケースが実現します。
データエンリッチメントとID:パートナーはファーストパーティデータを強化し、アドレッサビリティを高めることができます。
戦略的プランニング:広告主は広告予算の支出先を決定し、最も関連性の高いオーディエンスを特定できます。
キャンペーンのアクティベーション:消費者に直接、またはパートナーがサポートするチャネルを通じてリーチできます。
効果測定と最適化:組織はコンバージョンに対するチャネルの影響を把握し、メディア支出を改善できます。
たとえば、Booking.comはSnowflakeデータクリーンルームを使用してSnapと提携することで、キャンペーンのパフォーマンスをより効果的に測定できるようになりました。このコラボレーションにより、結果に対する信頼度が20%未満から99%にまで上昇しました。
しかし、データクリーンルームの可能性は広告業界にとどまらず、以下の例が示すように他の業界でも活用できます。
ヘルスケア:この業界は、機密情報を漏洩することなく、研究所とヘルスケア施設の間でのセキュアなデータ分析を可能にすることで、医薬品の研究開発を加速させています。
金融サービス:組織は、顧客データを保護しながら、不正検出を迅速化し、クレジットスコアリングモデルを改善しています。
広告は、このテクノロジーの価値を実証する開始点に過ぎません。プライバシー重視のセキュアなデータコラボレーションのメリットは、すべての業界において引き続き認識されており、今後数年にかけてより幅広い業界で採用されると予測されています。
データクリーンルームと他のテクノロジーとの比較
よくある誤解は、データクリーンルームはデータ共有テクノロジーと同じであるという考えです。セキュアなデータ共有ソリューションでは、データ所有者は、特定の制御を適用してデータセットを共有できるようになります。データ共有の目的は、粒度の高い基礎データへのアクセスを提供することです。これは、そのようなアクセスを防止しながらデータ分析を可能にするというデータクリーンルームの目的とはまったく対照的です。
データクリーンルームと比較されがちなもう一つのテクノロジーカテゴリーは、顧客データプラットフォーム(CDP)です。どちらもファーストパーティデータに依存して価値を提供していますが、類似点はそこで終わります。CDPは、マーケターと広告主がパーソナライズされた顧客体験をオーケストレーションできるようにするために、ブランドのファーストパーティデータへのアクセスを可能にすることに重点を置いています。しかし、CDPには、外部データ所有者とのセキュアなコラボレーションを支援するために必要なツールや手段がありません。
データクリーンルームの仕組み
2者以上の関係者の間でコラボレーションの合意が成立すると、「データプロバイダー」と呼ばれるデータ所有者がクリーンルーム環境をセットアップします。データプロバイダーは、クリーンルーム内でアクセス可能なデータを決定し、オーディエンス重複分析やルックアライクモデリングなど、それらのデータセットで許可されるアクティビティを指定します。
コラボレーションに関与する各関係者は、常に自身のデータセットを完全に制御できます。必要に応じてデータアクセスの付与や取り消しを決定し、データに対するガバナンスやオーナーシップを維持できます。
クリーンルーム内でのデータセットへのアクセスを可能にすると、データセット間のマッチングプロセスが必要になります。データクリーンルームテクノロジーには、特定の識別子をマッチングキーとして使用するように強制するものと、コラボレーターが選択したマッチング基準での合意を可能にする非依存のものがあります。コラボレーションの成功は、データセット間の指定されたデータポイント(特定のフィールドなど)の値のマッチの正確さに依存します。

多くの場合、クリーンルームでのコラボレーションは、必要なインサイトが取得されると終了します。ただし、シナリオによっては、クリーンルームで許可されたチャネルに結果データセットをアクティベーションできる場合もあります。
データクリーンルームだけでは不十分
データクリーンルームはセキュアなデータコラボレーションを支援しますが、プライバシーは単一のテクノロジーを導入することで達成されるものではないということを覚えておくことが重要です。真のプライバシーには、消費者を起点とした包括的な戦略が必要です。
組織が他の関係者とのデータコラボレーションを必要とする場合には、必ず消費者の同意を得なければなりません。組織が同意を確保するためには、透明性を優先事項として明確な価値の交換が存在するようにする必要があります。現代の消費者は、自社のデータの価値に対する意識が高まっており、見返りを理解せずにデータを共有することはほとんどありません。
データクリーンルームが提供する高度なプライバシーテクノロジーとセキュリティテクノロジーを利用する場合も、組織は強固なデータガバナンスの実践を確立する必要があります。この実践は、データのアクセスと使用に関係するすべてのアクティビティのガバナンスを確保して、コンプライアンスと信頼を維持するものでなければなりません。
データコラボレーションのためのSnowflakeデータクリーンルーム
Snowflake AIデータクラウドは、機密性の高いデータセットや規制されたデータセットを含むファーストパーティデータをセキュアに保存し処理するために、何千もの組織に採用されています。Snowflakeは、信頼性の高いインフラストラクチャと統合されたガバナンスモデルにより、均一に強制される包括的なコンプライアンス、セキュリティ、プライバシーの制御を提供します。
Snowflakeデータクリーンルームは、AIデータクラウド上に展開されるSnowflakeネイティブアプリです。データコラボレーションのためのプライバシー重視の信頼できる環境を提供します。技術チームとビジネスチームの両方をサポートするよう設計されており、データプライバシーを損なうことなくセキュアなコラボレーションを簡素化できます。
Snowflakeデータクリーンルームが選ばれている理由には、Snowflakeエコシステム内でのシームレスな統合が可能になるというだけでなく、次のユニークなメリットも貢献しています。
中立性:非依存で中立的なソリューションにより、利益の相反を回避できます。候補となる他のソリューションとは異なり、Snowflakeはデータ、IDソリューション、メディアを販売していないため、利益の相反が発生しません。そのため、真に中立的な選択肢となります。
信頼性:業界をリードするパブリッシャーや業界エキスパートがクリーンルームのイニシアチブですでに信頼して使用しているテクノロジーを活用することにより、コラボレーションを加速できます。
クロスリージョンおよびクロスクラウドの相互運用性:任意のクラウドインフラストラクチャ(AWS、Microsoft Azure、Google Cloud)を使用してパートナーとコラボレーションを行えます。
データコラボレーションの未来についてさらに詳しく知りたい方は、Snowflakeのバーチャルイベント「Accelerate Media and Entertainment」にぜひご参加ください。